「水土の知」に掲載されました

鋳田籠の活用について農業農村工学会誌「土水の知」に掲載されました。
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やまぐち発新製品「鋳田籠」の活用
吉冨 昌宏

Ⅰ. はじめに
山口県宇部市で実施中の県営農村地域防災減災事業(農業用河川工作物等応急対策事業)葉山ヶ瀬地区では、二級河川有帆川に昭和49年設置された葉山ヶ瀬堰(鋼製起伏ゲート)の改修工事を行うため、平成28年度から設計を行い、平成29年11月より工事を進めている。堰の改修にあわせて下流の護床工を新設する計画としておりその工法選定において「やまぐち発新製品」である鋳田龍を採用した。

Ⅱ.
やまぐち発新製品
鋳田籠

鋳田籠とは
鋳田籠は骨材鉄鋼建築材やパソコンの廃鉄を原料とした鋳鉄製パネルで、写真-1のようにパネル形状の形が「田の字」をした枠体(籠)の愛称で、根固め、沈床、護岸、砂防、災害復旧など、 さまざまな工事に用いることができる優れた製品である。枠は縦50cm ×横100cmのパネルを2mの枠に組み立て使用する。

鋳田籠の主な特徴は、組立てを人力作業で行い、中詰め材の投入は、パネルが強固なのでバックホウで簡単に施工できること、転石が多く、流速の速い急流河川でも使用できる耐久性と、鉄に比べ腐食しにくい耐食性を有していること、 また使用後の製品は溶解すれば何度もリサイクル(Recycle)でき、枠体の解体も簡単で、組み替えれば再利用(Reuse)可能、製品表面には有機溶剤などの塗装をしておらず、ゴミや有害物質が出ない(Reduce) といった3Rの点で、環境負荷が少ないことである。特に耐食性では、海水を想定した実験で耐食年数132年という優れた性能を持っており、一般的にフトン籠15年、 コンクリート60年と比較すると、 ランニングコストは大幅に抑えることが可能である。この優れた耐食性は、鋳鉄は鉄に比べ炭素分の含有率がおよそ10倍も高く、 もろく見える表面の錆が、中への錆の進行を遅らせるという特質があるためである。なお、鋳田籠は県内産新製品などを積極的に公共工事に活用することにより、開発促進へのインセンティブを与え、販路拡大を支援する「山口県公共工事地産地消推進モデル事業」において、従来品と同等の機能を有する「やまぐち発新製品」として指定されている。

2. 鋳田籠の採用
葉山ヶ瀬堰には、下流側縦断方向に現況5mのコンクリート十字ブロックの護床工があるが、 沈下や損傷が著しい状態のため、この5mを撤去し、基準により新たに20 mの護床工を設置する必要がある。護床工の選定に当たり、コンクリート護床ブロックと鋳田籠の比較検討を行った。施工はいずれも半川締切りにより行う。コンクリート護床ブロックは製品の重量が大きく·現場の制約から下流側に仮設道を設置しなければならない。一方鋳田籠の場合、製品はパネル形状で搬入され、組立ては人力作業で行えるため、仮設道は上流側のみで施工可能である(図-1)。
コンクリート護床ブロックと鋳田籠の比較検討結果は表-1のとおりであり、経済性では鋳田籠の製品単価が高いため本体工は高くなるが、 コンクリート護床ブロックは下流側の仮設道設置で仮設工が高くなり、合計では鋳田籠の方が安価となった施工性も同様でコンクリート護床ブロックは仮設道、仮締切り.ヤードなど、多くの仮設工カ咇要になり、鋳田籠より作業日数が長くなる。葉山ヶ瀬地区は、すべての工事を単年度で完成させることを目標としており、また自然環境に配慮し、地産地消の推進にもなることから、総合的に判断し、護床工に鈿籠を採用することにした。

3. 鋳田籠の施工
鋳田籠の施工手順を写真により説明する。
① 鋳田龍を搬入する。パネル形状なので広いヤードは必要ない(写真-2)。
② バックホウ人力により床ならしを行いながら、パネルを配置する。パネルは1枚20kg程度なので、人力で運搬可能である(写真-3).
③ 連結金具でパネルを連結し、組み立てる
④ 中詰めを投入し、敷きつめて完成(写真-5)。

4. 鋳田籠の設計
鋳田籠を護床工として使用する場合は、鋳田籠の枠単体ではなく、全体を1つのブロックと考え、中詰め全体の重量が、流体力より大きいことと、枠内の中詰めが流れない粒径を安定計算により確認する。

Ⅲ. おわりに
鋳田籠は「やまぐち発新製品」に指定されてまだ間もない。今後もこういった製品に着目し、公共工事における地産地消の推進のため、積極的な活用をしていきたい。
〔2018.2.6.受理〕

吉冨 昌宏(CPD個人登録者)
略歴
1979年 山口県に生まれる
1997年 山口農業高等学校農業土木科卒業
山口県入庁
2015年美祢農林事務所
現在に至る

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