木工沈床工

 

 

『鋳田籠』は、20年前に開発されました。

1998年1月、開発当時の『多自然研究』に紹介された記事が残っていましたので、ご紹介します。

まだ、『鋳田籠』という名称も付いていない時期のようで『鋳鉄沈床』と呼んでいました。

あれから、20年、多くの採用をいただき今に至ります。

2018年早々から、見積もりやプレゼンの機会、流速計算のお問い合わせが入っています。

来週は、長崎県と沖縄県の2件の施工があります。

本年も、多くの方に環境を守るための多自然川づくりの大切を『鋳田籠』を通じて広めていきます。

1996年6月14日 第三種郵便物認可
1998年1月1日発行侮月個·18発行)
第28号
第28号
1998 January:
全国をネットワークする
自然豊かな川づくりのための
情報交換·交流ツール
(財)リバーフロント整備センター

多自然型川づくりに役立つ新部材
「鋳鉄沈床」

治水事業と人間生活、そして自然環境保全の
三つの調和をいかにはかってゆくかは、今日の
河川技術者に与えられた大きな課題です。
わが国では90年代に入り、多自然型川づくり
が河川改修の重点課題となり、以来多くの河川
技術者が手探りでこの課題に挑戦してきました。
しかし、もともと昔の河川(昭和20年代以前)
は、あえて申し上げるまでもなく多自然型でし
た。その自然がつりくだした河川の構造や、先
人達の河川改修工法をひもとけば多自然型川づ
くりの本質が見い出せるはずです。
古来より、河床の改修工法として木工沈床が
採用されてきました。木工沈床は、一般に比較
的掃流力の大きな箇所での護岸根固め、または
水制、床止工に適しているといわれています”-
木工沈床は、粗朶沈床が急流部でしばしば流失
することから、明治時代の半ばに考案されたも
のであり、さらにそのもとになった粗朶沈床は
江戸時代後期、寛政,享和(1790 ~1802年頃)
に考案されたとの文献があります” “。
伝統的工法の一例を示しますと、松の方格材
を2m間隔に格子状に組み、これに松丸太を敷き
並べ(敷成木)、その上に詰石をのせこれを重ね
て数層にしたものが木工沈床です4) ,%
この木工沈床は、河床の安定という土木機能
面での効果の他に、多自然型川づくりに関して
も大きなメリットをもたらすのです。それは河
床全体が、マクロ的に多孔状の構造となるため、
その隙間が様々な生物に好都合の生息環境を与
えるからです。
一つには、水質浄化の機能があります。河川
水の浄化は、水生植物、礫、河川構造物などの
周りに付着した藻類や水生植物等の植物や微生物によ
る有機物の分解によってなされることから、その木質の程
度は植物や微生物の量と水との接触機会(水の流れが
必要)の度合によって決まるといわれています。
つまり、詰石、礫等の凹凸を含めた全表面に付着微
生物膜が生成するため、木工沈床の詰石、枠工
等による表面積の増加が大いに水質浄化に寄与
するのです。
さらに、その付着微生物膜がプランクトンや
底生動物の食物として消費され、そして再生産
されることも水質浄化を助ける要因となります。
次に、木工沈床は、生態系全体にも極めて良
好な生息環境を与えているのです。詰石に付い
た付着藻類や水生植物は、底生動物の餌となり
さらに底生動物が魚類の餌となるいわゆる食物
連鎖による生態系がつくり出されます””
このようにして生態系の活性化が促進され、
その後は何の手を煩わすことなく多自然型河川
が自然のメカニズムによって作りあげられてい
くのです。
さて、このような生態系に素晴しい環境を与
える木工沈床ですが、いくつかの問題がありま
す。一つは、材質面における耐久性です。水中
では数十年耐えると言われる松材でも、乾燥期
や河床低下による木材の露出による乾湿の繰り
返しには数年も耐えられません10..”.
その理由は、次のような仕組によります。
木材をぼろぼろにさせるのは、木材腐朽菌や
軟腐朽菌によるといわれますが、この菌は、植
物の種子に相当する約10ミクロンの大きさの胞
子を空気中にまき散らし、木材の表面に付着し
て発芽し、菌糸を木材の組織に進入して繁殖し
てゆきます。ところが、木材が水中にあれば、
胞子は付着できないこと、木材腐朽菌や軟腐朽
菌は好気性で生育には酸素を必要とすることか
ら水中では酸素不足となり活動できません。し
かし、いったん木材が空気中に出てくるとこれ
らの菌が繁殖できるわけです”, izi。
表1
土壌に設置した場合の心材の耐用年数
耐用年数11樹種
クヌギ
耐用年数
樹種
アカマツ 5.5
5.0
カラマツ 6,011クリ 7.5
7.5
シラカシ 6.5
4.0
ミズナラ 6.5

ヒバ
ヒノキ
2.511ケヤキ
6.0
7.0
7.0
ブナ
次に、材料調達及び作業性,施工期間を含め
た経済性における問題があります。松材を写真
1のような形状に加工し、しかも現場で組み立て
る一連の作業は、近代における工法として定着
するものとは考えられません。
しかし、今ここに新しい提案があります。山
口県の鋳物メーカーがこの木工沈床の枠体に変
わる新しい工法を開発しました。概略を説明し
ますと、鋳鉄の枠パネルを特殊な結合金具を使
ってワンタッチで枠体を形成します。そしてそ
の枠体に15cm ~ 50cm径の砕石を投入すれば沈
床が完成しますから取り扱いや施工が簡単です。
9,
さて、この鋳鉄の耐久性つまり、強度と錆に
対して問題ないかの疑問について、金属関係の
(写真4,
5,
6,
7,
8,
10)
専門家は次のように答えています。
一般に、鋳鉄はもろいというイメージがあり
ますが、それは普通鋳物「ねずみ鋳鉄」を指し
たもので、この鋳鉄沈床に使用される鋳鉄は、
「ダクタイル鋳鉄」といい、普通鋳物とは異なる
種類の鋳物です»,ダクタイル鋳鉄は、球状黒
鉛鋳鉄のことで、鋳鉄中の炭素が球の形をなし
ており、この球状炭素が規則正しく連なって
「ねばり」があるため、脆性破壊(折れ)が生じ
にくい性質をもっています。つまり、鋳物とい
っても実は鋼材の性質を持ったものです。わた
したちが通常目にする道路上のマンホールの蓋
は、このダクタイル鋳物でできています。それ
は、重量トラックが通っても壊れない程の強度
があることを証明しています。
そして、錆についてですが、ダクタイル鋳鉄
は、表面がいったん酸化すると容易に内部まで
進行しません。錆は鉄分と酸素との結合によっ
て生じますから、空気中より酸素の少ない水中
では錆の進行も一層遅くなるのです。
次に、鉄分が生態系に与える影響については
どうでしょうか。昔から生活に鉄鍋、茶釜が使
用されていますが、それには訳があります。
人間に限らず、赤血球を持つ動物は鉄分が不
足すると、赤血球を作ることができず貧血を起
こします。したがって、鉄分は魚類など動物に
とっては不可欠の成分なのです NHK番組「た
めしてガッテン」での実験では、「鉄鍋から摂取
する鉄は、食物から摂取するよりもかなり吸収
率がよい」という結果がでています14)。
また、海水生物での鋳鉄漁礁とコンクリート
漁礁の海藻の付着量を調査したデータがありま
す。この調査では、圧倒的に鋳鉄漁礁の方に付
着量が多いことがわかります” (図3)
これらのデータから、鋳鉄から溶け出す鉄分
がいろいろな生物に良い棲息環境を与えること
がわかります。
3. 00
2 sa。
2。00수
.500
.000
-o
鋳鉄礁海道総重量
100
10
魚礁設置
12л
図3
漁礁別の海藻付着量の推移,s)
鋳鉄沈床の構造等についてさらに説明しますと、
鋳鉄沈床は、図2に示す4枚のパネルによって構
成されています。1枚のパネルは柵状になってい
て、柵の一辺は1.2mで正方形に組み、柵の1本
の太さは2.5cm × 1.5cmとなっています
組立は、それぞれ隣り合うパネルの端を結合
金具で写真8のように打ち込んでゆきます。金具
は打ち込むだけでクサビ作用で締結できますか
ら、ボルト·ナット締めのような時間はとりま
せん。このため、施工時間は木工沈床に比べ著
しく短縮できます。
隅金具の結合強度面について、このクサビは
下方から強い衝撃で打ち戻さない限り決して外
れませんから、いったん施工すれば自然のカで
外れる心配はありません。
鋳鉄沈床は、沈床としての使用のみならず
例えば、篭マットと同様な利用方法が考えられ
ます。(写真11) また、すでに述べましたように
水面が上下する水辺や、空気に触れる部分での
木工は、耐久性が数年と短いことから、このよ
うな箇所での使用には特に適しているのです。
さらに、製造方法は鋳造ですから、デザイン
は自由で、たとえば多自然型にふさわしい形状
にすることもできます。
この鋳鉄沈床は、木工沈床の優れた特徴を受
け継いで、半永久的ともいえるほどに耐久性を
高め、さらに施工性を飛躍的に向上させたもの
です。しかも、微量に溶出する鉄分が生態系に
好ましい影響を与えることから、それはまさに
多自然型素材といっても過言ではないでしょう。
この新部材の鋳鉄沈床が、皆様の多自然型川
づくりにいささかでもお役に立ち、わが国の河
川に広く普及することを願ってやみません。
参考文献
1)
貝瀬常次:新潟県土木工事の手引きP126,
新潟県建設業協会
「多自然型川づくり」への取
静岡
2)富野章:続·
組み<日本の伝統的河川工法>P105,
県島田土木事務所
3)真田秀吉:日本水制工論P249, 岩波書店
4)貝瀬常次:新潟県土木工事の手引きP127,
新潟県建設業協会
5)富野章:続·
「多自然型川づくり」への取
組み<日本の伝統的河川工法> P392-409
静岡県島田土木事務所
6)稲森悠平,林紀男:直接浄化法を活用した
水域からの汚濁負荷削減,河川·湖沼·水
辺の水質浄化、生態系保全と景観設P63.69
工業技術会
7)井手哲夫:水処理工学理論と応用P319
8)水野信彦·御勢久右衛門:河川の生態学
9)鈴木興道:「多自然型河川工法と魚の生息
10) (財) リバーフロント整備センター:多自然
11)木材工業ハンドブック:微生物による劣化
12)木材活用事典編集委員会:木材活用事典
13) JIS:G5502球状鋳鉄品
P28-31
環境の保全について」pg
型川づくりの取り組みとポイントP43
P744-749
P100
14) http:/lvillage. infoweb. or. jp/ fwgd1058/hinl htm:
<血液中の鉄について>
日本鋳鉄漁礁協議会中国四国ブロック:鋳
鉄漁礁開発試験報告書P16
15)

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